電気料金やガス代が上昇するなか、蓄電池が注目を集めています。蓄電池を上手く活用すると電気代の節約が可能です。しかし、そもそも蓄電池の仕組みがよく分からない人も多いかもしれません。仕組みが分かると、自分のニーズに最適な蓄電池タイプを選べるようになります。
蓄電池の仕組みと構造、主な蓄電池の種類や特徴、選ぶときのポイントを解説しましたので参考にしてください。
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蓄電池の仕組みと構造
蓄電池はどのような仕組みで動いているのでしょうか。基本的な原理や構造について紹介します。
プラス極とマイナス極
電池には、プラス極(正極)とマイナス極(負極)の2つの極があり、この二つの極の間で化学反応が起こることで、電気エネルギーが生まれます。電池の中の化学反応は次のような流れで発生します。
発端となるのは、マイナス極における化学反応です。ここでリチウムなどの素材から電子が放出され、外部回路を通じてマイナス極からプラス極へと移動します。この電子の移動が電気エネルギー発生の原理です。マイナスからプラスへ向かって電子が流れることを「放出」と言います。
プラス極(正極)・マイナス極(負極)には金属の棒が設置されており、それぞれ異なる金属や材質を使用しています。プラス極には酸化物や金属酸化物、マイナス極には黒鉛、シリコン、ニッケルなどが一般的です。電池の種類によって用いる素材は異なります。
電解液の役割
電池は、異なる二種類の物質からなるプラス極とマイナス極、電解液から構成されています。プラス極とマイナス極については述べましたが、この2つの間で電気を伝える役割を果たすのが電解液です。
電解液は電気を通すためにつくられた特殊な溶液であり、電子はこの電解液の中を自由に動くことができます。電池のなかに電解液を入れることで、電極間(プラス極・マイナス極)の化学反応が促進され、電気エネルギーを生成したり蓄積したりできるようになります。
プラス極とマイナス極の金属を入れるだけでは、電流は生まれません。電解液が電極間で電気を電導するイオンの移動をサポートすることで、電流が生まれる仕組みがつくられます。
一次電池と二次電池
蓄電池に関する基本知識として、一次電池と二次電池があることを知っておくことが大切です。どちらも電池ですが、特徴や性質は異なっています。
一次電池は、使うとエネルギーがなくなってしまう使いきりタイプの電池です。種類が豊富で二次電池と比べてコストが低いというメリットがありますが、使い切りのため、一度放電したら再び充電することはできません。なくなったら新しい電池を用意する必要があります。
二次電池は、エネルギーがなくなっても再充電して繰り返し使用できるタイプの電池です。電気の放出だけでなく、充電して蓄積できるところが一次電池と異なるポイントです。蓄電池はこの二次電池に該当します。
二次電池は充電と放電ができるため、このサイクルを利用して電池を長期間使用することが可能です。一次電池と比べて初期費用は高いですが、長期的にはコストを抑えられます。
充放電の原理
マイナス極(負極)に蓄えられた電子がプラス極(正極)へと移動することで、外部に電気エネルギーを放出されます。この過程が、放電です。
充電する場合はこれと逆の流れです。充電では、外部から電気エネルギーをかけ、プラス極からマイナス極へと電子が移動します。プラス極の金属が溶けてイオンとなり、負極でイオンが金属となって析出し、放電前の状態に戻るのです。電池内の構成要素が連携することで、効率的な充放電が可能となります。
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主な蓄電池の種類と特徴
蓄電池には大きく分けて4種類あります。鉛蓄電池・リチウムイオン電池・ニッケル水素電池・NAS電池です。それぞれの特徴を紹介します。
鉛蓄電池
鉛蓄電池は、リチウムイオンと並んで主流と目される蓄電池です。正極に二酸化鉛、負極に鉛、電解液に希硫酸を用いています。重くて大きいため用途は限定されますが、乗用車をはじめ大量の電力が必要な車両用蓄電池などに使われています。
メリットは価格が安い、再利用が可能、長時間の使用でも安定した性能を維持できることなどです。デメリットは、用途が限定される、使用頻度が高いため性能が低下する、希硫酸により破損の危険が伴うことなどがあります。寿命は5年程度ですが、蓄電池のなかでは短めです。
鉛蓄電池は、大きな電力を必要とする場合や、コストパフォーマンスを重視する場合に適しています。
リチウムイオン電池
リチウムイオン電池は、現在最も普及しているメジャーな蓄電池です。正極にリチウム含有金属酸化物、負極に炭素材料、電解液に有機電解液を用いています。軽量でコンパクトなため、モバイル機器、電気自動車、家庭用蓄電池など幅広いシーンで活躍しています。
リチウムイオン電池のメリットは、軽量・コンパクトに加えて長寿命や急速充電など多彩です。充放電サイクルが多いため長時間使用できる一方、充電は短時間で完了します。寿命も10〜15年程度と長めです。
デメリットは価格が比較的高い、高温により性能が低下しやすい、発火のリスクがあることなどです。
ニッケル水素電池
ニッケル水素電池は、電動工具や電子機器、ハイブリッドカーなどで広く利用されている蓄電池です。正極にオキシ水酸化ニッケル、負極に水素吸蔵合金、電解液に水酸化カリウムを使用しています。
メリットは過充電・過放電に強いことです。急速充放電が可能なほか、リチウムイオン電池と比べて火災のリスクが低く、寿命に関しても5〜7年程度と鉛蓄電池よりは長めです。初期費用はかかりますが、長期的には乾電池と比べて経済性は良好です。デメリットは、価格が高く、リチウムイオン電池と比べて重いことなどがあります。
ハイブリッドカーの蓄電部に用いられるニッケル水素電池は、急速充電を可能とする点が高く評価されています。ニッケル水素電池市場自体も成長を続けており、将来性の点でもリチウムイオン電池に引けをとりません。
NAS電池
NAS電池は、工場や大規模電力貯蔵施設などで用いられる大容量の蓄電池です。正極にリチウム含有金属酸化物、負極に炭素材料、電解液に有機電解液を使用しています。大容量ながらコンパクトな設計も可能で、かつ材料資源も豊富なため価格を安く抑えられるのがメリットです。寿命も15年程度とリチウムイオンに匹敵します。
課題は温度管理と安全管理です。NAS電池は300℃程度と作動温度が高く、可燃性の高い有機電解液を使用するため、徹底した温度管理と安全管理が必須となります。NAS電池は大規模なエネルギー貯蔵が必要となる場面で活躍する蓄電池ですが、将来的には住宅用としての活用も検討されています。
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家庭用蓄電池を選ぶときのポイント
家庭用蓄電池を選ぶときは、いくつかの要因を検討の上、自宅に適した機種を導入することが大切です。家庭用蓄電池を選ぶときに気をつけるべきポイントを紹介します。
家庭用蓄電池の容量
蓄電池の容量とは、蓄電池に貯めておける電力量です。5.0kWh、10.0kWhのように「kWh(キロワットアワー)」で表されます。kWhは電力量の単位で、1kWの家電製品を1時間使用すると1kWhとなります。
家庭用蓄電池を導入する際に容量を選ぶときのポイントは、1日の消費電力量を把握することです。家庭で使用している電力量が分かれば、おのずと必要な容量が見えてきます。
ちなみに一般的な家庭用蓄電池の容量は約7kWhです。これは中型ですが、小型で4.0kWh〜5,0kWh、大型は10kWh前後が主流となっています。10kWhの容量なら、停電時でも1日は電気不足になる心配はありません。
容量が大きいと電気の使用時間も伸びますが、コストも高くなるため、家族のライフスタイルと予算に合わせて選ぶのが良いでしょう。
家庭用蓄電池の定格出力
定格出力は、蓄電池に貯められた電力を一度にどれだけの量を引き出せるかを表す能力です。電力の容量がダムの水なら、定格出力はダムから流れ出る水の量であると表現できます。単位はkWで表されます。定格出力が3kWの場合、その蓄電池で使用できる消費電力量の合計は3kWです。
家庭用蓄電池を導入するときの定格出力の目安は、家庭で同時に使用する家電製品の消費電力が基準になります。例えば、家の中で同時に使用する家電製品の消費電力が、冷蔵庫(300W)、エアコン(800W)、テレビ(150W)、電子レンジ(1500W)なら合計で2.75kWとなり、3kWの定格出力で十分にカバーできます。
このように家庭製品を同時に使用する場合をシミュレーションしてみましょう。
家庭用蓄電池の寿命
家庭用蓄電池の寿命は10〜15年が目安ですが、より重要なのはサイクル数です。サイクル数とは、蓄電池の充電100%の状態から0%まで完全に放電し、もう1度100%まで充電するまでを1サイクルとする指標です。蓄電池に蓄えた電気をフルに使用できる回数……と言い換えることができます。
家庭用蓄電池の寿命を見るときは、年数だけでなく何サイクル使えるかを知ることが大事です。サイクル数は、メーカーや機種ごとに公開されているスペック表などで確認できます。公開されていない場合は、後述のメーカーの保証期間が目安になります。
家庭用蓄電池の太陽光発電との併用
蓄電池は太陽光発電との相性も抜群です。自宅に太陽光発電設備も導入し、併用するのか否かでも選択すべき蓄電池の機器が異なります。例えば、太陽光発電と併用する場合は、ハイブリッド型蓄電池が候補として有力です。ハイブリッド型蓄電池にすると、既存の電力系統だけでなく太陽光発電からも充電が可能となります。
一方、太陽光発電との併用をしない場合は、単機能型蓄電池の導入で十分かもしれません。単機能型蓄電池とは、単独で使用できる蓄電池です。機器によって異なりますが、本体価格はハイブリッド型と比べて安い傾向にあります。蓄電池を導入するときは、太陽光発電と併用するのか否かを検討しましょう。
家庭用蓄電池の保証内容
蓄電池の保証内容はメーカーによって異なることがあるため、購入時に条件をよく確認する必要があります。チェック項目は、保証期間、保証の適用範囲、無償か有償か、などです。保証期間は10年〜15年が一般的ですが、年数だけでなく料金の有無も確認する必要があります。10年間は無償で、15年間は有償になるケースも少なくありません。
保証の適用範囲は、保証の対象となる部品や故障の確認が必要なほか、指定工務店での施工が必要かなど、保証が適用される条件を把握しておくことが大事です。
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まとめ 蓄電池の仕組みを知り、最適な蓄電池を導入しよう
蓄電池の仕組みと構造、種類や特徴、機器を選ぶときのポイントを紹介しました。蓄電池の仕組みを知れば、家庭用蓄電を購入するとき最適な機器を選ぶのに役立ちます。
それと同時に設置会社の選び方も重要です。家庭用蓄電池を導入する際は、日常の電力使用量、停電時の電力使用量などを考え最適な蓄電池を導入するために、丁寧に説明してくれる設置会社に相談しましょう。