昨今、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーにおいて中国の存在感が飛躍的に高まっている。
太陽光パネルの製造においては「世界でシェア7割」と、市場を独占している。
中国の存在感が大きいのは、突然起こったことではなくFIT制度が始まったころから中国産の太陽光パネルは市場に多く流通しており、多くの日本メーカーも製造の一部または全部を中国に委託していたので、シェア7割は想定内です。
ちなみに、日本の太陽光パネルの「世界シェアはわずか0.3%」です。
◆ 中国依存の新たな問題?
中国は人件費が安く、結果的に製造コストを削減できるので、世界の生産ラインとして席巻している。
あらたな問題として浮上しているのが「ウィグル問題」である。
ユニクロも炎上していたが、太陽光業界でも同様に、太陽光パネルの製造をウィグル自治区で強制労働を強いることで低価格製造を実現しているのでは?というおなじみの問題です。
ただし、中国はシェア7割で各メーカーが太陽光パネルの製造を依存しているので、強気な追求は危険で、製造を断られたら、事業活動に悪影響となる。
実際、米政府は中国の4社を制裁対象としており、「ウィグルのシリコンが入っていない太陽光パネル」の要望が殺到し、太陽光パネルの価格が高騰している。
結果的には、中小企業などの発電投資の費用対効果が下がることになり、再生可能エネルギーの普及促進に悪影響で、脱炭素の実現も遅れる可能性がある。
◆ ウィグルのシリコン生産の現状は?
ウィグル自治区はシリコン生産において、4割のシェアを占めている。
強制労働の実態がわからないので、ウィグル自治区のシリコンを購入しないことは、ウィグル自治区にとってはマイナスではないか?と思うのだが、それよりも強制労働の問題の方が解決すべき大きな問題なのでしょう。
◆ 各国の対策は?
中国は製造コストが安いので、資本の原理で製造依頼が殺到するのは当然のこと。
とはいえ、輸入依存度が高すぎるのは各国にとってはリスクで対策が必要となる。
アメリカやインドは中国からの輸入に対して関税強化などの制限をかけ、国産の太陽光パネルが流通する仕組みを作っている。
フランスは、太陽光パネルの製造工程で温室効果ガスの排出量が少ない太陽光パネルを使用する発電業者にインセンティブをつける仕組みを構築し、結果的に中国産の太陽光パネルを締め出す仕組みを構築した。
イギリスは、洋上風力発電の国内調達比率を6割とする目標をかかげ、結果的に中国からの輸入量を制限している。
各国の輸入制限に対する中国の応戦としてWTOに提訴している。
WTOの基本的な考え方は、関税を極力撤廃し、サービスや製品の流通を活性化させることなので、中国の主張は的を得ています。
ただし、中国はEUへの輸出でダンピング(法外に安い価格で販売)を行っていた前科があるので、内容次第ですね。
ちなみに、日本は輸入制限を求める声はあったようですが、特に対策はされておらず自由に輸入できているようです。
◆ 洋上風力発電について
日本では2040年には国内調達比率が60%となるビジョンを策定しているが、主要製造メーカーである日立製作所や日本製鋼所は風力発電の製造から撤退している。
結果的に2019年の風力発電関連の国内製造シェアは10年前の1割程度で目標に対して逆行している。
風力発電の国内の主要製造メーカーは、シャープと京セラのみとなる。
日本は技術力が高く、導入期やそれより前の開発段階であれば世界のリーディングカンパニーのポジションなのに、成長期になると製造コストで対抗できず中国や韓国に遅れを取るパターンだ。
技術は必ずコモディティ化するので、結局のところ低価格で大量生産できる生産ノウハウがないと世界を席巻することは難しそうですね。