寿命の目安!蓄電池の耐用年数とは
蓄電池の寿命を示す指標の一つが「耐用年数」です。
使用期間で表すことが多いですが、サイクル回数で表すこともよくあります。
では、この耐用年数は具体的に何を意味しているのでしょうか。詳しく確認していきましょう。
◆ 使用期間
蓄電池の寿命は「使用期間」として表されることが多いです。
「使用期間」という表現がなされる蓄電池として、バックアップ用電源などが挙げられます。
こうした蓄電池は頻繁に充放電を繰り返すことはないため、サイクル回数ではなく使用期間という言葉を用いて寿命を表現しているのです。
この使用期間は、製造元メーカーによって目安の使用期間が定められています。
ただしメーカーが提示している期間はあくまで想定値なので、環境や使用状況によってやや異なってくることも多いです。
また、使用期間は蓄電池の性能を示すものではないので、「使用期間で示されている期間内は確実に動作し続ける」訳ではありません。
頻繁に充放電を繰り返したり、過酷な環境下で使い続けたりした結果、表示されている使用期間より寿命が短くなることもあるのです。
蓄電池の法的耐用年数は6年となっていますが、これはあくまで税法上のものです。
つまり実際に使い続けられる年数ではなく、税金計算で減価償却資産の価値がなくなるまでの期間であることを知っておきましょう。
また、メーカー保証は10年を超えていることがほとんどなので、「法的耐用年数の6年を超えたら使えなくなる」という訳ではないことをしっかり頭にいれておきましょう。
◆ サイクル回数
蓄電池の耐用年数を「サイクル回数」と表現することも一般的です。
蓄電池における「サイクル」とは、充電0パーセントの状態から100パーセントまで充電し、放電してまた0パーセントになるまでのことをいい、この一連の流れが「1サイクル」となります。
蓄電池は充電と放電を繰り返すごとに少しずつ劣化していき、最終的には使用できなくなります。
この使用できなくなるまでに何回充放電を繰り返すことができるか、を表すのが「サイクル回数」なのです。
つまり、サイクル回数が多ければ多いほど、蓄電池としての寿命は長いということになります。
使用期間と同様、メーカーによって想定された数値なので、使用する環境や状況、保守条件などいろいろな要因によって実際のサイクル回数は変動することになります。
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耐用年数を過ぎるとどうなる?蓄電池の本当の寿命
メーカーが提示した保証年数を過ぎたとしても、その蓄電池がすぐさま使えなくなってしまう訳ではありません。
では、寿命を迎えた蓄電池はどうなるのでしょうか。
蓄電池は使用していくうちに徐々に劣化していき、最大容量が少しずつ減っていきます。
十分なパフォーマンスを発揮することができるのは10年ほど、4,000サイクルが一つの目安であると言われています。
これを過ぎたとしても充電可能な容量が減るだけで、蓄電池としては使えることが多いです。
ただし充電可能な容量が減ると言うことは、利用効率が悪くなっていくということを意味します。
最大容量が50パーセント減少すれば、単純に考えて効率は半分になってしまうため、かなりコストパフォーマンスが悪くなってしまっています。
コストパフォーマンスが悪くなっても、新しいものを導入するより古いものを使い続けた方が安上がり、と考える人も多いでしょう。
実際、最大容量の50~70パーセントもあれば、蓄電池としての機能は十分果たすことができます。
しかしあまりに劣化した蓄電池を使い続けていると、電気の流れが上手くいかなくなり発火する可能性があります。
多くの蓄電池は、発火を防ぐために異常検知機能が付いていることが多いのでいきなり爆発する、というようなことは起こりづらいですが、劣化したものを無理に使い続けるとそうしたリスクを背負うことになることは覚えておきましょう。
蓄電池のバッテリーが寿命を迎えていなかったとしても、内部にある他の電子部品が先に壊れてしまうことも少なくありません。
蓄電池を少しでも長く利用するためには、定期的なメンテナンスをしっかりと行い、蓄電池の状態をよく把握することが重要です。
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使い方次第で大きく変わる!耐用年数を縮めないためのポイント
蓄電池の耐用年数は、使い方によって大きく左右されます。少しでも長く使うためにはどうすればいいのでしょうか。
◆ 設置場所に気をつける
蓄電池の寿命を延ばす上で特に大切になるのが、設置場所です。
蓄電池は使用に適した動作温度がメーカーによって決められており、基準より極端に高かったり低かったりする場所に蓄電池を設置してしまうと、トラブルが起こりやすくなります。
特に蓄電池は高温に弱い傾向にあるので、温度が高い場所は注意が必要です。
25度を超えるような場所で使い続けていると、充放電のサイクルが縮まり劣化しやすくなります。
また、高温は自己放電によるダメージが起こりやすくなるため、最悪の場合破裂や発火が発生する恐れもあります。
高温を避けるためには、設置場所に工夫が必要です。
室内に設置する場合は温度があまり変化しない涼しい場所に設置するようにしましょう。
屋外ならば、直射日光が当たらないよう注意することが大切です。
高温を避けることは大切ですが、それなら低温にすればいいかと言えばそうではありません。
低温下では内部抵抗が大きくなり、蓄電池として機能しなくなってしまいます。
また、見落としがちですが蓄電池は湿度にも弱いです。
蓄電池の種類によっては、内部結露が発生し故障や不具合に繋がる可能性が高くなります。
◆ 正しい使用方法を守る
正しい使用方法を説明書でしっかりと確認し、それを守ることも蓄電池の寿命を延ばすことに繋がります。
まず充電するときは、最適な電圧、電流で行うことを厳守しましょう。
間違った強さで充電してしまうと、蓄電池に大きなダメージを与えてしまいます。
電池の種類による違いも頭に入れておく必要があります。
「バッテリーは最後まで使い切ってから充電した方がいい」という話をよく聞きますが、家庭用蓄電池などで使用されるリチウムイオン電池の場合はそれとは異なり、充電した分を全て使い切ってしまう前にこまめに充電した方が電池の寿命が延びるという特徴があります。
そのため50パーセントを切ったら充電することで、メーカーの定めたサイクル回数を超えても劣化することなく使い続けられる可能性が高くなります。
太陽光発電と蓄電池を併設する場合は、蓄電池のメーカーや型式を必ずチェックし、対応するものを接続するようにします。
太陽光発電と蓄電池は、連携させることで効果的に利用することができますが、相性の悪いものと繋げてしまうと蓄電池の劣化を招きます。
最悪の場合故障や不具合が起こり、蓄電池だけではなく太陽光発電にも悪影響が出るかもしれません。
どちらも長期間の利用を想定している製品なので、必ず対応メーカーかどうか確認した上で接続するようにしましょう。
◆ 過充電や過放電を行わない
容量100パーセントの状態から更に充電を行うことを過充電、容量が0パーセントにも関わらず放電を長時間継続することを過放電と言います。
この過充電と過放電は蓄電池に深刻なダメージを与え、故障のリスクが非常に高くなるため絶対に避けなければなりません。
ダメージが大きすぎると修理では間に合わず、バッテリー自体を取り替えなければならなくなります。しかも過充電や過放電による故障はメーカー保証外になるため、大きなコストが発生することになります。
現在販売されている多くの蓄電池には、過充電や過放電を制御し、制御を最適化するシステムが搭載されています。そうしたシステムがある場合はそこまで心配せずとも大丈夫でしょう。
少し気をつけておきたいのが、小型ポータブル蓄電池を非常時に備えて倉庫などに保管しておく場合です。蓄電池は使用していなくても自然と放電状態になるため、充電量が少ないとすぐ0パーセントになり過放電状態になってしまいます。
このような場合、100パーセントフル充電の状態で保管するようにしましょう。過放電を防げる上、停電時などいざというときにすぐ電気を使うことができます。
◆ 種類やメーカーよっても違う!長持ちする蓄電池とは
蓄電池の耐用年数は、種類やメーカーによっても大きく異なります。蓄電池の種類は、バッテリー本体に用いられる材料によって区別します。最も長持ちすると言われているのが鉛蓄電池です。
蓄電池の中では最も歴史が古く、現在はフォークリフトの電動車用電源などで使用されています。この鉛蓄電池の使用期間は約17年。
次いで工場などのバックアップ電源などとして使用されているNAS電池が長く、使用期間は約15年となっています。
リチウムイオン電池は約10年持ちますが、乾電池などに使用されているニッケル水素電池の使用期間は5~7年ほどです。ニッケル水素電池を10年もたせるのは難しいと考えておきましょう。
蓄電池の寿命はメーカーによっても異なります。1日1サイクルを想定した場合、シャープ蓄電池は33年、オムロン蓄電池は22年使用できると提示されており、寿命は非常に長くなっています。
その他でも、ほとんどのメーカーが16年以上もつことを謳い蓄電池を販売しています。
ただし長期間使用することができたとしても、バッテリー以外の部品が劣化することで、10~15年ほどで蓄電池が故障してしまうというケースもあるため、注意が必要です。
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