東北電力の値上げが6月から実施され、家庭向けの電気料金の引き上げ幅は24%と大幅な伸び率になりました。東北電力が電気代を値上げするのは、東日本大震災後の2013年9月以来約10年ぶりのことで、物価の高騰に苦しむ家計を直撃しています。この記事では、なぜこの時期に電気代が上がるのかについて解説するとともに、今後も予想される電気代の値上げから家計を守るにはどうしたらよいのか、その対処法なども提案します。
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東北電力が6月から実施する値上げの概要は?
東北電力が6月から実施する電気代の値上げでは、標準的な家庭の月額料金が1万142円となります。これは従来と比較して26.27%、金額にして2110円のアップに該当するものです。この値上げ幅には、配送電網の利用料にあたる託送料金の見直し分も含まれているため、電気料金単体では24%だったものが実際の請求額ベースではさらに上乗せされて26.27%となったものです。
では、ここでいう標準的な家庭とはどのようなものなのでしょうか。これは東北電力が設定した標準モデル世帯のことで、従量電灯Bタイプで契約している家庭を表しています。電気の使用量に応じて料金を支払う契約方式を従量電灯といいますが、A・B・Cの3種類ある従量電灯のうち、従量電灯Bとは30アンペア、月間使用量260キロワット時という低圧電力の契約メニューに該当するものです。
値上げのモデルケースでは、標準的な家庭以外に商店や事務所などでの月額料金でも事例が挙げられています。それによれば契約容量13キロボルトアンペア、月間使用量810キロワット時の場合は値上げ率22.43%で値上げ額6719円、値上げ後料金が36675円のものと、契約容量6キロワット(低電圧契約)、月間使用量340キロワット時の場合は値上げ率20.70%で値上げ額2856円、値上げ後料金が16652円のものとが示されています。
なお、ここで示された値上げ額に関しては規制料金についてのものに限られます。電力の料金プランには、規制料金と自由料金がありますが、規制料金とは、2016年4月に開始された電力自由化よりも前に設定されていた料金体系であり、自由料金は特別な規制を受けず電力料金を自由に設定できる料金体系のことをいいます。自由化料金については6月以降の見直しになりますが、規制料金と同様に値上げにつながるかどうかは未定です。東北電力管内で値上げ対象となる規制料金契約者は536万件、約8割が該当するとされています。
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東北電力、なぜこの時期に料金を値上げする?
東北電力がこの時期に料金を値上げせざるを得ない背景にあるものとしては、「燃料費の高騰」「国内の電力不足」「福島県沖地震による影響」などが挙げられます。
燃料費の高騰
電力の燃料となる石油や石炭、液化天然ガスなどの火力燃料価格が高騰していることが、電力値上げに大きく影響しています。高騰の原因については、世界的なエネルギー需要の増加、天候不順や災害による供給のひっ迫、ロシアのウクライナ侵攻による天然ガスの輸入量の制限などの個別要因が挙げられるでしょう。火力燃料の多くを輸入に頼っている日本は、これらの外的要因に強く影響を受けてしまいます。
さらにコロナによる世界的なパンデミックの影響も見逃せません。ウィルスを封じ込めるために各国で行われたロックダウン政策は、グローバル経済の停滞を招きました。その間、火力燃料としての化石燃料は一時的に需要の減少をこうむり、OPECなどをはじめとした原産国は減産体制に舵を切らざるを得ませんでしたが、世界経済が徐々に回復していく過程で、今度は供給が需要に追い付かず、需給バランスが崩れてしまったという点も燃料費の高騰につながりました。
加えて為替相場が円安傾向に傾き続けたことも、要因の一つとして数えられます。ただでさえ火力燃料が世界的に高騰し続ける中で、これを輸入しようとすればその経済的負担がますます増大してしまうといえるでしょう。
国内の電力不足
2011年の東日本大震災を契機に、国内の電力の約4分の1をまかなっていた原子力発電所が8割以上で稼働を停止させました。そのため、日本の電力の多くを火力発電に頼らざるを得ない状況にありましたが、脱炭素社会に向けた世界的な潮流の中で、徐々に自然エネルギーへの転換も行われてきました。そのため、国内は慢性的な電力不足に陥っている状態にあり、これがコロナ後の需要拡大に向けて電力供給のひっ迫を招く結果となりました。安定供給を実現するためには、高い燃料費を払ってでも原料を調達する必要が生まれます。これも電力値上げの要因の一つとなるものです。
福島県沖地震による影響
燃料費の高騰や国内の電力不足による電気代の値上げは、全国の電力会社に共通する要因ですが、東北電力の値上げに関する個別要因として、2021年、22年と立て続けに発生した福島県沖地震の影響も挙げられます。地震の発生により東北電力の設備に被害が生じ、その修復費用なども含めて財務的な負担を被ったというのがその理由です。経営基盤の回復・強化という点で電気代の値上げに転化せざるを得ないという会社側の主張が反映されています。
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東北電力の値上げ、地域経済にどんな影響がある?
東北電力管内には、農業や製造業、小売業をはじめとする多くの産業が見られます。中でも農業や畜産業は、東北地方の重要な産業の一つであり、電力を用いた灌がいや施設の照明などに依存しています。電気代の値上げは、農業生産のコスト増加や収益性の低下を招くおそれがあり、生産者は生産方法の見直しやエネルギー効率の向上を迫られることになるでしょう。
製造業では、特に電気を大量に使用する工場などで、生産コストの増加など大きな影響を被ることが予想されます。競争力の低下や投資の抑制、人員の削減といった悪影響につながることも懸念点です。小売業では、電気を使用する店舗や施設の運営に直接影響が出ます。電気代の値上げは、小売業者の経費増加や利益率の低下をもたらす可能性があり、これを避けようとして価格上昇に転化してしまえば、消費者の購買行動の減少や地域内の景気の冷え込みといった事態につながるおそれもあります。
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東北電力の値上げ、政府はどう対応する?
世界的なエネルギー価格の高騰を受け、東北電力の値上げなどによる地域経済の冷え込みを防ぐために、政府も対策に乗り出しています。その一つが、急激な値上がりに対する負担軽減策である「電気・ガス価格激変緩和対策事業」です。これは、国に対して申請を行った電気・都市ガスの小売事業者などに補助金を交付し、それを元に家庭や企業の電気代・ガス代を値引きするというものです。期間は2023年の1月使用分から同年9月の使用分までとされ、一般家庭であれば、たとえば月260キロワットの電気を使用した場合では、1月から8月の期間は毎月1820円が、最終月の9月は910円が補助されることになります。
ただし、この補助は9月使用分までであり、10月以降については未定であるため、補助の継続がない場合は電気代が急激に上がったという印象を受けてしまうかもしれません。
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そもそも電気料金とはどんなもの?電気料金制度の仕組みを解説
このように見てくると、電気代の値上げに対しては全く無防備で無力感も否めませんが、それでもどうにか自衛する手段はないのでしょうか。その糸口を探るためには、まず電気代がどのように決まるのか、料金制度の仕組みを知ることが大切になってきます。
そもそも電気代というのは、「基本料金」「電力量料金」「再エネ賦課金」「燃料調整費」といった要素で構成されているものです。基本料金とは、電力会社の設備やインフラの維持管理費をカバーするために設定され、通常は契約容量や、住宅用・産業用など使用場所の種類に応じて設定されるものです。電力量料金は、実際に使用した電力に応じて計算される料金で電気使用量(キロワット時)に単位料金を乗じて算出されます。一般的に、使用した電力量が多いほど料金も増えます。
再エネ賦課金は、再生可能エネルギーの普及促進や環境負荷の軽減を目的として電気代に上乗せされる特別な料金であり、電力会社によって金額が異なります。燃料調整費とは、電力会社が火力発電などの発電に使用する燃料、たとえば石炭や天然ガスなどがその燃料ですが、これらの燃料の価格変動を反映した料金になります。燃料調整費は発電に必要な燃料の価格変動に応じて毎月変わるのが特徴です。燃料の価格が高騰すると、燃料調整費も上昇し、電気代に影響を与えます。
これらの要素を総合して計算されることで、電気代は決定されますが、規制料金なのか自由料金なのかで総額が異なってくるように、電気代というのは決して一律に定められているのではなく、料金自体を選択できる各種のプランがあるという点は押さえておくべきポイントです。
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東北電力の電気代値上げ対抗策、節電でどこまでできる?
電気代の値上がりには、まず節電で対抗する方法があります。一つには照明の効率化があるでしょう。これはエネルギー効率の高いLED電球や蛍光灯に切り替えることで、消費電力を削減するものです。必要な時に明るさを調整するディマー機能を備えた照明器具を使用するのも有効です。電化製品を適切に利用することも大切です。電化製品はスタンバイモードでも一定の電力を消費しますので、使用していないときには電源を切るか、電源タップのスイッチを切ることで無駄な電力消費を防ぐことができます。
冷房や暖房の設定温度を調整し、エネルギー使用量を抑えることも大切です。適切な断熱や換気対策を行って、室内の温度や湿度を調整することも有効になります。さらに、電力使用量を監視するためのスマートメータやモニタリングシステムを導入するのも効果的な節電につながります。実際の使用量を把握し、無駄な電力を見つけて改善する見える化は、節電のモチベーションをアップさせます。
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東北電力の電気代は、新電力の利用で安くなる?
“東北電力をはじめとした従来の地域独占型の電力会社による電力供給体制を見直し、競争原理に基づく自由な電力市場を再構成する目的で導入されたのが、2016年の電力自由化です。これによって、消費者は価格やサービスの内容で電力の購入先を選択できるようになり、より良い条件のもとで電気代の削減をはかることが可能になりました。電気代を安く抑えられるようになった理由は、他業種からの新規参入者である新電力が、より効率的な経営や運営方法、新しいビジネスモデルを採用することで価格競争力を身につけたからです。
また、新電力は顧客志向のサービスを提供することで差別化を図ろうとしますので、契約条件や料金プランに柔軟性を持たせ、デジタル技術を活用したスマートメータやオンラインサービスの提供など、より便利で使いやすいサービスの開発にリソースを投入します。そのため、東北電力管内でも、既存の規制料金手法のプランではなく、自由料金手法の新電力を利用することで電気代が安く抑えられる場合があります。”
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新電力にはどんな種類のプランがある?
新電力には、プランによっていつでも元の契約に戻せるタイプ、携帯電話とのセット割引やインターネットとのセット割引があるタイプ、ガスとのセット割引があるタイプなど、オリジナルのセット割引を付加して利用者の利便性をはかる各種のサービスが用意されています。セット割引以外にも、加入によってポイントがたまるタイプや再生エネルギーの比率を高めて提供するタイプなど、電力を選ぶ利用者にとって、選択基準がわかりやすいメニューも豊富に用意されていますので、一度確認してみるのが良いでしょう。
また新電力は、従来の地域独占型電力会社である東北電力でも「よりそう」というブランド名で提供しています。主なプランとしては、従量電灯Bを契約している顧客向けに、基本料金が安くなる「よりそう+eねっとバリュー」、日中でも多く電気を使用する大家族向けの「よりそう+ファミリーバリュー」、平日の夜10時から翌朝8時までと休日の電気料金が安くなる「よりそう+ナイト&ホリデー」、オール電化住宅向けの「よりそう+スマートタイム」などがあります。
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電気代節約の注目株、太陽光発電ってどんなもの?
電気代の値上げに対しては、節電や新電力への切り替えなどは効果的な方法ですが、電気代を払うという点では変わりありません。一方で、自宅で電気を作り、電力会社から購入する電気は最小限にするという観点で、今注目されているのが自然エネルギーの太陽光発電です。
太陽光発電とは、太陽光を太陽電池で電気に変換する発電方式のことを指します。太陽電池(ソーラーパネル)とよばれる半導体素子を用いて、太陽光のエネルギーを直接電気に変換します。太陽光発電は、化石燃料を使用せずに電気を作ることができるため、環境にやさしい発電方法とされており、未利用スペースである屋根や壁面などにソーラーパネルを取り付けることで、個人宅でも設置場所に困ることなくエネルギー源として無限に利用可能な太陽光で発電し続けることができるのです。
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太陽光発電のメリットとは?
太陽光発電を行うにあたって、ソーラーパネルと併用することで最大限に効果を発揮するのが蓄電池です。蓄電池はソーラーパネルが発電した電気エネルギーを貯めておくための装置であり、電力を一時的に蓄えることができるデバイスです。蓄電池を使うと、太陽の光がない時間帯や需要が高まる時間帯に電力を供給することができます。これにより、電力の自給自足が可能となり、電気料金の削減やエネルギーの安定供給が実現できます。
また、太陽光発電は売電も可能です。自家消費する電力が余った場合、余剰の電力を電力会社に売ることができます。これにより、電気料金の収入源となるだけでなく、地域のエネルギー供給に貢献することもできるようになります。さらに、太陽光発電は災害対策にも有効です。災害時には電力供給が不安定になる可能性がありますが、太陽光発電システムは地上の電力網とは独立して機能するため、停電時でも一定の電力を確保することができます。これにより、緊急時の電力需要や避難施設の電力確保に役立つようになる点が大きなメリットだといえます。
今回の東北電力の値上げのように、電気代の値上げは今後どのような形で家計を直撃してくるかわかりませんが、その都度振り回されるのではなく、太陽光発電のような有効な手段で電力危機に備えることも検討すべき一つの選択肢であるといえそうです。