再生可能エネルギー電力の「産地証明」を新たな付加価値に
JEPX(日本卸電力取引所)は、2023年を目処に再生可能エネルギー由来の電力がどこでつくられたかを示す「産地証明」の取引を開始する。
欧米では当たり前となっている、発電所の種別や所在地を明らかにする仕組みが、日本では乏しく、再生可能エネルギーの発電電力であることの明確な証明ができなかった。
◆ 「産地証明」の詳細
再生可能エネルギーの環境価値を証明する「非化石証書」を取引する市場において、太陽光発電や風力など発電の種類や発電所の場所などを把握できるようになります。
国のFIT制度(固定価格買取制度)を通じて、電力の非化石証書に産地証明を義務付ける。
・非化石証書の取引価格:0.3円/kWh程度
・産地証明を上乗せ:0.1~0.5円/kWh程度
◆ 「産地証明」の目的
JEPX(日本卸電力取引所)は、再生可能エネルギーの取引価格に差をつけたい。
例えば、環境問題を引き起こしている大型メガソーラーなどは他の再生可能エネルギーよりも安価で取引される可能性がある。
逆に、環境に貢献し地域と一丸となって構築した再生可能エネルギーは高価格で取引される可能性があります。
これを新たな付加価値とし、電力の供給側が需要家のニーズにマッチする発電所を構築することで、環境改善につながり、その分を高価格で取引できるような付加価値の仕組みを構築する。
需要家側は取引価格が高額になりデメリットになりそうですが、昨今の脱炭素対策の情報開示義務などの影響で非化石発電電力の詳細をアピールすることで、投資家に説明しやすくなります。
◆ 世界の動向
使用電力を全て再生可能エネルギーでまかなう「RE100」では、どこの電力を利用しているかトラッキングを参加企業に義務付けるようです。
電源を特定する仕組みは欧米が先行しており、欧州では再生可能エネルギーの電力がどこでどんな発電方法で発電されたのかをシステム上で管理することを加盟国に義務付けています。
欧州の各国は国をまたいで、産地証明付きの電力を購入できます。
アメリカでも同様に州ごとの産地証明が義務付けられています。
日本では産地証明もさることながら、地域横断の電力配線網が整備されておらず、現時点では発電したエリアで消費するのが現実的です。
◆ 国内の再生可能エネルギーの動向
例えば、スターバックスジャパンは2021年10月には全ての路面店(350店)で再生可能エネルギー由来の電力に切り替え済みです。
また、丸井グループは、東北地方で行う催事においては、同じ地域の再生可能エネルギーを利用する。
ソニーやリコーも、追跡情報付きの再生可能エネルギーの電力を増やしています。