エネオスホールディングスは、再生可能エネルギーの新興企業であるJREを2000億円ほどで買収する方針を固めている。
目的は石油依存からの脱却で、再生可能エネルギー関連事業への転換です。
◆ エネオスの現状は?
エネオスの現在の売上高構成比は以下の通りです。
・石油石化製品:78%
・石油天然ガス:1%
・金属などその他:21%
エネオスはほとんどの収益を化石燃料に依存しており、脱炭素を実現するためにはコア事業を変革するか、大規模な新事業の立ち上げが必須となります。
マクロ的には、世界的に脱炭素の動きは活発化しており、日本も2050年までにカーボンニュートラルを実現することを表明しており、エネオスなどの大企業も率先して脱炭素を事業戦略に取り入れる必要がある。
◆ JREとは?
2000億円で買収するJREとはどんな会社なのでしょうか?
・JRE:ジャパンリニューアブルエナジー
・株主:ゴールドマンサックス、シンガポール政府投資公社
・2020年の業績:売上高36億円 純利益6.78億円
・創業:2012年
・実績:保有する再エネ電源は88万kW(開発中も含む)
JREは日本や台湾で、計60箇所の太陽光発電や風力発電の発電所を手掛ける会社。
◆ 2000億円の買収額は妥当か?
・JREの業績:売上高36億円 純利益6.78億円
・買収額:2000億円
・PER:294(買収額/純利益)
・PSR:56(買収額/売上高)
と、かなり高価格のバリエーションにも見えるが、JREが保有している発電所の収支や権利の譲渡益などを勘案すれば納得できる金額になりそうです。
JREの最大の魅力は、「洋上風力発電のノウハウと、利権」で、エネオスが自社で再エネ事業に参入するよりも圧倒的に早く実現できる。
脱炭素、再生可能エネルギーの市場は成長市場で導入期と成長期の中間くらいのステージなので、いち早く参入しポジションを取ることが重要です。
さらに、JREは多くの太陽光発電所を所有しておりFIT制度の初期のものも多く、セカンダリー市場で高値で譲渡できるポテンシャルもある。
資金調達
エネオスは23年3月までに再エネ関連に4000億円を投資する方針で、今回のJREの買収で投資予算の半分を費やすことになる。
買収資金は、油田の利権などを売却して2200億円の現金を調達する見込みで、3000億円分の社債も発行している。
◆ エネオスにとっての魅力は?
JREの魅力は上記の通り、太陽光発電や風力発電の発電所運営のノウハウや利権だが、エネオスが特に意識しているのは「洋上風力発電」で、陸上よりも安定的に強風が吹くので高い発電力が期待できる。
日本政府も洋上風力発電を再生可能エネルギーを主力発電に移行するうえでの切り札と考えており、2040年までに洋上風力発電の発電量を4500万kWに引き上げる目標を掲げている。
JREは、北海道や秋田県や長崎県に洋上風力発電所を保有しており、JREの洋上風力発電の発電量は100万kW以上の規模になる見込みです。
エネオスの再エネ関連事業の今後の展開としては、アメリカやオーストラリアでの太陽光発電や、台湾での洋上風力発電での海外展開を決めており、JREを巻き込んだ積極的な海外展開を目論んでいる。